イチの第3日曜市 Interview Series vol.05 鮮魚衣笠 衣笠睦生さん

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毎月第3日曜日はiti SETOUCHIに福山市内や近郊の農家さんたちがお野菜や果物、お魚、美味しい焼き菓子やパンをもってやってくる「itiの第3日曜市」

このシリーズでは第3日曜市運営メンバーが出店者さんにインタビュー!
ベントの中だけではなかなか知ることができない、出店者さんの魅力や商品についてお伺いします。

Interview Series vol.05
鮮魚衣笠 衣笠 睦生さん
(聞き手:田尻イタリア野菜シンジケート 酒井 良治さん)

鮮魚衣笠さんへの取材は指定された鞆中央公園にて。約束の時間の少し前に公園に到着すると既に衣笠さんを待ち構えるお客様がすでに20人以上。木陰で楽しそうにおしゃべりしながら待っている。そこにスピーカーから大音量で「必殺仕事人」のテーマソングを鳴らしながら衣笠さんが軽トラでやってきた。公園に到着するやいなや軽トラの荷台を改造した什器から常連さんが手際よくコンテナを取り出して公園内に並べて、たちまち公園の中に市場ができあがった。

想像していた鞆のちいさな公園での魚の行商というイメージとはまったく違う次元の活気と熱気と連携に、取材の僕たちは呆気に取られるばかり。軽トラの荷台に詰め込まれた商品は魚、お刺身、お惣菜、調味料、お菓子、野菜、パン、日用品など全部で200種類くらい。

お客さんは軽トラのまわりを一周しながらお目当ての品を手にとってどんどんカゴに入れていく。

衣笠睦生さん(むーちゃん)がこのスタイルで移動販売を始めて8年。曜日によって鞆町内を3ヶ所から5ヶ所ほど回ってお客様の元に商品を届ける。午後から回る介護施設での販売も加えると週に鞆町内の20箇所くらいを回っている。お客さんのほとんどが高齢のご夫婦世帯か一人暮らしの方だという。買い物できる商店が少なくなり高齢のために車に乗ることもできないお客様の近くまで出向いて商品をとどけている。

お客さんに話を聞いてみた。「昔はいっぱい店があったけど、ほとんどがやめてしまった。買い物するところがなくなって、むーちゃんの移動販売が頼り。ここには毎週必ず買いにくるし、ほかの曜日は別の場所まで足を伸ばすこともある。主人も私も魚が食べたいから、小さいサイズのお刺身盛りを買うのが楽しみ。住んでいるのはみんなこの近所だけど、家からなかなか出てこられない人もいるから、ここに集まるのがお互い元気でいるかの確認の場所よ」と笑って話してくれた。

衣笠さんの朝は早い。午前3時には福山市内の卸売市場に出かけていきその日に販売する魚や野菜を仕入れ、鞆に戻って仕事場で魚を捌いて町内のホテルや旅館へ卸す。それからが行商用の商品の準備。高齢の少人数世帯お客様用に小さなお刺身盛りのパックを作っていく。鞆の地物も扱うが商品の多くは市場で仕入れしたものになる。

「行商をはじめた頃は魚だけだったんです。お客さんが欲しい魚を量って軽トラのうしろで捌いて販売する昔ながらの魚屋さんスタイル。でもそれでは時間がかかりすぎて多くのお客さんに対応できなくなって、いまのかたちに変わっていったんです。」

お客さんの要望に応じて取り扱い商品は魚だけではなく種類が増えていった。

もともと漁師がたくさんいた鞆ではあるが、昔と比べると魚は獲れなくなりいまや漁師としてだけ生計をたてることは難しく、高齢化で後継のいない漁師がほとんど。観光客も増え観光客相手のお店も少しづつ増えている。変わっていく町の中でも人の営みは変わらない。それを衣笠さんが支えている。