iti SETOUCHI グッドデザイン賞2023「グッドデザイン・ベスト100」

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iti SETOUCHIは、グッドデザイン賞2023「グッドデザイン・ベスト100」に選出されました。
受賞ギャラリー
受賞展は、GOOD DESIGN EXHIBITION 2023として、10月25日より東京ミッドタウンにて開催されます。

_project background_
巨大な元百貨店を「屋根のある公園」に
iti SETOUCHIが開業するまでの背景として、福山市が所有する元百貨店のリノベーション再生事業としてスタート。駅前の好立地でありながら、様々な事業者が活用しては撤退を繰り返してきた。そのため、これまでの商業的な利用とは異なり、公民連携で駅前のエリア再生までを視野に入れた<使い方の新規性>が求められる再生プロジェクトとして計画を展開しました。
活用にあたっての条件は、①7年間という短期間の暫定利用をすること、②貸床面積を50%までとしパブリックスペースをふんだんに設けること。この条件を満たしながら、同時に多額の投資や巨大な空間が閉鎖し続けることによるエリアへのリスクを回避するため「部分的改修・スピード再生案」という手法を検討。5000平米以上もある広い空間を「屋根のある公園」となることを目指し、繊維業や鉄工業など福山の強みとなる地域資源を生かし、またこのエリアの文脈を引き込み福山の街が集積したような配置計画をした施設と、チャレンジする多種多様な人を応援する土壌づくりをビジョンとしたプロジェクトとしてスタートした。


_リノベーション建築特徴とデザイン_
Point 1:グランドレベルに注目した部分的改修・スピード再生
街と接するグランドレベルのみを再生活用とすることで、改修投資の軽減と、時間的な再生スピードの速さを実現。閉鎖期間の短縮により、エリア価値を毀損する恐れも小さく済んだ。床と天井の仕上げはほとんど行わず、既存を生かすようなデザインを意識した。

Point 2:設備投資を圧倒的に削減する重力換気による自然の空調
外壁を4箇所ぶち抜き、館内に自然風が吹き込む入口を作った。1階開口部から吹き込む風がエスカレータースペースを通り抜ける自然通風により、一定の暑さを解消できる環境を作った。全館空調はなしにし、人の溜まるエリアにだけスポット空調を採用する、設備投資削減を実現した。

Point 3:屋内の活動を外にまで展げる屋外公開空地の換地
施設の役割として、エリア全体への波及効果を期待されていたことから、活動は屋内だけで閉じず、外にまで展開していくことが重要であった。そこで外部の公開空地を占有利用するために、内部空間の一部と換地した。結果、屋外の占有利用と、屋外の要素を屋内に引き込んだ面白い風景が実現した。

Point 4:工作的に作り続ける余白のあるデザイン
様々な人が活動することで、常に変化し続けることをポイントとしていたことから、パブリックスペースを中心に作り込みすぎないデザインを意識した。平常時は飲食する人などの居場所となりつつも、イベント時は大胆に場をハックし、コントラストのある風景を作り出している。可変性に飛んだ空間使いをするための「余白のあるデザイン」が生きている。

Point 5:つながりを生み出すコミュニティデザインと仕掛け
施設利用者との関係性づくりは工事期間中から開始し「Under Construction」をテーマに工事中の変化が見える<のぞき窓>を設置した区画を市民に開放。中でも、施設で使用する什器を市民とつくるワークショップを複数開催し、仮設壁も同時につくりあげ、施設をつくっていく体験を市民と共有した。


_審査員の評価コメント_
百貨店の廃業は日本全国どの地域でも大きな課題になっている。駅前の好立地に立つ大きな建物から賑わいがなくなることは地域の衰退を象徴するかのようで、良いことは一つもない。一方でどの地域でもその再活用方法にこれといった答えを見出せないでいる。そんな中、このプロジェクトがその突破口となる可能性を秘めていることを大きく評価した。ポイントは、欲張らずに1階だけ使うこと・最小限かつ効果的なスケルトンの変更・商業に頼らないプログラムの三つだ。まずは7年間という期限付きとのことだが、ここから街にどんな活動の芽が生まれるか、大きな期待を持って応援したい。

担当審査員:成瀬 友梨浅子 佳英丸山 優子山梨 知彦吉田 愛Chee Su Eing


GOOD DESIGN EXHIBITION 2023 -2023年度グッドデザイン賞受賞展-
会期:2023年10月25日(水)〜10月29日(日)
会場:東京ミッドタウン各所(ベスト100展示はB1Fホール)
内容:2023年度全受賞デザイン展示 *入場無料

GOOD DESIGN AWARD
グッドデザイン賞は、人が何らかの理想や目的を果たすために築いたものごとをデザインととらえ、その質を評価・顕彰している国内唯一の総合的なデザイン賞です。1957年の創設以来、60年以上にわたりシンボルマークの「Gマーク」とともに広く親しまれながら、いまでは世界45の国と地域から応募が集まるデザイン推奨運動で、暮らしや社会をよりよくしていくための活動です。グッドデザイン賞は、年1回の公募制で実施し、企業・デザイナーなどから応募されたデザインを、国内外のデザイナーや建築家などの専門家、約100名の審査委員が審査します。審査の視点には、「人間的視点・産業的視点・社会的視点・時間的視点」と様々な観点による複眼的思考を基本にその是非を問いながら、総合的なバランスにおいてグッドデザインか否かを判断されます。一次審査(書類書類)、二次審査(現品審査)を経て、優れていると認められたデザインに「グッドデザイン賞」が贈られます。

Open A
設計・デザインを軸としながら、社会課題の解決や、エリアの開発、新しいカルチャーの創出などを実現する複合的なチームを目指しています。規模や領域を横断しながら、建築や都市の可能性を追求します。